「羊をめぐる冒険」の翻訳(98)
6 日曜の午後のピクニック(4)ガール?フレンドが戻ってきたのは午後の三時だった。彼女は格子柄(がら)のシャツに芥子色の綿のズボンをはいて、見ているだけでこちらの頭が痛くなりそうなくらいの色の濃いサングラスをかけ、僕と同じような大きなキャンパス地のショルダー?バッグを肩から下げていた。
「旅行の用意をしてきたのよ」と彼女は言って手のひらでふくらんだバッグを叩いた。「長旅になるんでしょ?」
「たぶんそうなるだろうね」
彼女はサングラスをかけたまま窓際の古いソファーに横になって、天井を眺めながらはっか煙草を吸った。僕は灰皿を持ってそのわきに座り、彼女の髪を撫でた。猫がやってきてソファーに飛び乗り、彼女の足首に顎と前足をかけた。彼女は煙草を吸うのに飽きると残りを僕の唇のあいだにはさんであくびをした。
「旅行に行くのは嬉しい?」と僕は訊ねてみた。
「うん、とても嬉しいわ。とくにあなたと一緒に行けるのがね」
「でも、もし羊がみつからなかったら我々はもうどこにも帰る場所がないんだよ。一生旅行してまわるような羽目になるかもしれない」
「あなたのお友達のように?」
「そうだね。我々はある意味では似たもの同志なんだ。違うのは彼は自分の意志で逃げ出し、僕ははじき出されってことさ」
僕は煙草を灰皿につっこんで消した。猫が首を上げて大きなあくびをし、それからまたもとの姿に戻った。
「あなたの旅行の仕度は済んだの?」と彼女が訊ねた。
「いや、これからさ。でも荷物はそんなにないよ。着替えと洗面用具ぐらいだからね。君だってあんなに大荷物を抱えていく必要はないんだよ。必要なものは向うで買えばいいんだ。金は余ってる」
「好きなのよ」と言って、彼女はくすくす笑った。「大きな荷物を持っていないと旅行してるような気がしないんだもの」
「そんなものかな?」
開け放した窓から鋭い鳥の声が聞こえた。聞いたことのない鳴き声だった。新しい季節の新しい鳥だ。僕は窓から射し込んでくる午後の光を手のひらに受け、それを彼女の頬にそっと置いた。そんな姿勢のままずいぶん長い時間が過ぎた。僕は白い雲が窓の端から端まで移動するのをぼんやりと眺めていた。
「どうかしたの?」と彼女が訊ねた。
「変な言い方かもしれないけれど、今が今だとはどうしても思えないんだ。僕が僕だというのも、どうもしっくり来ない。それから、ここがここだというのもさ。いつもそうなんだ。ずっとあとになって、やっとそれが結びつくんだ。この十年間、ずっとそうだった」
「どうして十年なの?」
「きりがないからさ。それだけだよ」
女朋友回来时已是下午3点。她穿了格子衬衣和芥子色的棉布裤,带有让人从外表一看就头痛的浓深色的太阳镜,肩上背着和我买的大小相同的背包。
“做了旅行准备。”她说着用手掌拍着鼓鼓的背包。“估计要长时间旅行了。”
“应该是的。”
她戴着太阳镜躺到窗边的老沙发上,向上眺着天棚抽着烟。我拿着烟灰缸坐到她旁边,抚摸着她的头发。猫走过来爬到沙发上,用颚和前脚搭在她的脚上。等她把烟吸够,把剩下的烟放到我的两嘴唇间夹住,打起哈欠。
“喜欢去旅行吗?”我问。
“这个,当然很高兴了。特别是能和你一起去。”
“可是,如果找不到羊,我们就无处可归了。也许会达到一生要全部旅行流浪那种困境。”
“就像你的朋友那样?”
“是的。我们在一定意义上是相似的。不同的是,他是依自己的意志自愿出逃而旅行,而我是被赶出去而旅行。”
我把烟放到缸里灭掉。猫抬起头打上一个大哈欠,然后又恢复到原来的动作。
“你的旅行准备做好了吗?”她问。
“什么?也就刚开始。行李也并不那么多,也就是替换衣服和洗漱用具罢了。你要带上那么大的行李包是没有必要的了。必要的东西可以到那里买,钱多得是。”
“我就喜欢这样。”她说声,哧哧地笑着。“若不带上大行李包就感觉不到在旅行。”
“还有这样的事?”
从打开的窗户传来了尖锐的鸟叫声。这是没有听到的鸟叫声。是在新的季节里的新鸟吧。我让从窗户照射进来的午后的阳光照到手掌上,把那手掌轻轻地放到她的脸颊。这样的姿势过了很长时间。我模糊地眺着白云从窗的一侧移动到另一侧。
“有什么不正常的?”她问。
“虽然说是不正常的说法,怎么也不能想现在就是现在。我好像不是我,还有这里也不是这里。一直就是这样。到很久的将来两者就结合在一起。在这十年间一直就这样。”
“怎么会十年呢?”
“因为没有中断。也就只此罢了。”
「変な言い方かもしれないけれど、今が今だとはどうしても思えないんだ。僕が僕だというのも、どうもしっくり来ない。それから、ここがここだというのもさ。いつもそうなんだ。ずっとあとになって、やっとそれが結びつくんだ。この十年間、ずっとそうだった」
这一段,难读懂。理解力达不到主人公的内心。